唐辛子の辛味成分であるカプサイシンが血行を促進させて育毛に効果を発揮するという話はたびたび耳にするが、今回は「山葵(ワサビ)が育毛に効果が有る。」という研究結果が新聞にあるのを目にした。

カプサイシンで有名な唐辛子と、今回取り上げられた和わさび
何でも、和わさびの香り成分「わさびスルフィニル(6-メチルスルフィニルヘキシルイソチオシアネート(6-MSITC))」が薄毛の悩みを抱えた男女の救世主になるかも知れないというのだ。
わさびの辛味成分であるアリルイソチオシアネートではなく、香りの元となる成分に着目するなんて渋いなと思いつつ記事を読むと、投げやりな研究内容に提灯記事臭さを感じた。
わさびスルフィニルと育毛の因果関係は疑問符付き
ソース元のヘッドラインが「わさびの香り成分、育毛に効果?」という具合に疑問符付きになっており、怪しさを醸し出している。
また、ヘッドラインだけでなく記事内容も、比較対照試験では付き物のプラシーボ組が存在しない、イソフラボンのみの摂取グループ・わさびスルフィニルのみの摂取グループが存在しない、そもそもサンプル数が少ない、といった信頼性に乏しいデータに基づいた研究発表について書かれているのみで怪しさ満点だ。
asahi.com(朝日新聞社):わさびの香り成分、育毛に効果? 名古屋で研究発表 – 社会
30~50代の12人に、和わさびの香り成分「わさびスルフィニル」を1日1ミリグラム(わさび約3.5グラム分)、「大豆イソフラボン」を1日75ミリグラム(豆腐200グラム分)を6カ月間取ってもらい、前後の頭髪の様子を写真で比べた。9人は、一目で分かるほど髪が増えた。
香り成分の摂取で知覚神経が刺激され、成長因子が増えて、毛根の細胞を再生させる働きが促された、とみられるという。岡嶋教授は「育毛サプリメントができるのも夢ではない」としている。
研究結果を発表したのが学会ではなく、民間主催団体である「わさびフォーラム」という点や、名古屋市立大学大学院の岡嶋研二教授は様々なメーカーの健康食品の有用性をアピールする研究発表を数多く行っている点、岡嶋教授の言う「わさびスルフィニル」が配合されたサプリメントが金印から既に発売されている点、何故か和わさび限定で西洋わさびが除外されている点、「6-メチルスルフィニルヘキシルイソチオシアネート(6-MSITC)」を「わさびスルフィニル」と名付けて商標登録したのが金印であるという点などから考えると、今回の記事はわさび製造メーカーの金印による記事を装った広告、つまりペイドパブリシティである可能性が高い。
ダイエットや育毛の情報には罠がいっぱい
テレビや新聞には健康にまつわる情報が数多く出回っているが、情報の出所が怪しいものや、特定企業の宣伝も混在しているので、情報を実践する場合には十分な注意が必要だ。
柑橘類の香り成分であるリモネンのダイエット効果がバラエティー番組で取り上げられた際に、フルーツの香りをクンクン嗅いでいる目方の大きい人が妙に滑稽だったのだが、育毛を心がけている人が今回の提灯記事を読んで、一生懸命ワサビの臭いを嗅いだり、毎食ワサビを摂取している所を想像するとやりきれない気持ちになる。
その一方で、「インディアンのナバホ族にはハゲはいない?!」というシャンプーをパクって、「わさび農園にはハゲはいない?!」「寿司職人にはハゲはいない?!」といった感じで、わさびスルフィニルを配合したシャンプーを販売すれば儲かるのではないだろうか、などと下らないことも考えついてしまった。(わさびスルフィニルは経口摂取でないと効果がないのだろうか?)